【目的】先進国では男性が父親になる平均年齢が高くなっており、年齢が高くなればなるほど高血圧などの慢性疾患に罹患する確率が高くなる。高血圧は造精機能低下(精液量、精子数、血清テストステロン値の低下、奇形を呈する精子数増加)に関与する報告がなされている。また、高血圧治療として用いられる降圧薬の中には精液パラメーターに対して有害作用をもたらすものもあることから、適切な降圧薬を選択することは重要である。本研究では、自然発症高血圧ラット (SHR) の精巣組織傷害に対するアンジオテンシンⅡタイプ1受容体拮抗薬 (ARB) ロサルタンの効果を検討した。
【方法】36週齢雄性SHRに対してロサルタン (0, 3 or 10 mg/kg) を18週間1日1回連日経口投与した (n = 8)。対照として、溶媒投与の正常血圧ラット (WKY) を用いた。薬物投与後、血圧測定、血液を採取後、左右の精巣組織を摘出し、生化学実験を行った。加えて、残りの精巣組織を用いて、HE染色を行い、組織評価を行った。
【結果】溶媒投与SHR群は溶媒投与WKY群に比して、左右の精巣重量/体重比、平均血圧、精細管における精上皮の脱落、精巣組織における好中球浸潤のスコア、精巣組織中における酸化ストレスマーカーであるマロンジアルデヒド (MDA)、好中球浸潤マーカーであるmyeloperoxidase (MPO) が高値を示し、血清テストステロンは低値を示した。低用量ロサルタン投与SHR群は溶媒投与SHR群に比して、MPOは低値を示したが、平均血圧や精上皮の脱落のスコアに関して統計学的有意差はみられなかった。高用量ロサルタン投与SHR群は溶媒投与SHR群に比して、平均血圧、精巣組織中のMDA及びMPOが統計学的有意に低値を示し、血清テストステロン値は高値を示した。さらに、高用量ロサルタン投与SHR群と溶媒投与WKY群の精巣重量/体重比及び精上皮の脱落スコアには有意差はみられなかった。
【結語】SHRの精巣組織傷害に対してARBロサルタンは抑制効果を示すことが明らかになった。