中耳真珠腫は鼓室内に扁平上皮細胞が侵入してくる病態であり、25000人に1人の頻度で全年齢層に発症する。治療原則は上皮である母膜を含めた全摘手術であるが、術中切除マージンの同定は極めて困難であり、わずかに残存した母膜から再発をきたすことがある。手術で全摘できずに再発を繰り返し病態が進行すると、難聴やめまい、脳膜炎などを生じ、患者のQuality of lifeは低下する。現在、母膜遺残の確認が主に術者の主観的評価に委ねられているため、真珠腫の再発を根絶するには遺残母膜の客観的、かつ確実な同定手法の開発が不可欠である。悪性腫瘍ではないものの、手術で全摘できたかをしっかり確認し、遺残の無い状態で手術を終えるための手段が求められている。この可視化には真珠腫に特異的な蛍光抗体を用いることが有用であるが、通常の抗体では防腐剤が添加されているため細胞への障害性があったり、分解されにくかったりするなどの問題点もある。そこで、我々は特異的物質として見出したガレクチン7を標的とした蛍光標識アプタマーを作成し、中耳真珠腫に高い結合力と特異性を持ち、分解されやすく生体に優しい、技術を開発した。本アプタマーは患者由来の真珠腫組織凍結切片や、マウスの背部に移植した患者由来真珠腫組織を明瞭に標識し、弁別できることがわかった。現在臨床実用化に向けた製剤とするべく最適化を図っている。