【背景と目的】更年期症状や生理痛などに用いられる漢方薬の一つである桂枝茯苓丸は、子宮筋腫の縮小に奏功した症例が報告されている(Tanaka et al., Frontiers in Nutrition, 2021)。一方、桂枝茯苓丸には神経防護作用が報告されている(Shimada et al., Phytomedicine 2004)。我々は神経芽細胞腫由来のSH-SY5Y細胞に対する効果を調べた。【方法】桂枝茯苓丸(TJ-25)は滅菌水に懸濁したのち、それぞれ100、250、500mg/Lとなるように培地に加え、48時間後にCCK-8(Dojindo, Japan)を用いて450nm吸光度を計測した。さらに抗がん剤であるCamptothecin (CPT; 2 nM) と100、250、500 mg/Lの桂枝茯苓丸を同時に加えた場合の450nm吸光度も同様に調べた。また抗リン酸化ヒストンH2AX (γ-H2AX) 抗体を用いた免疫染色により核内のドット状の”フォーカス”が検出され、これはDNA損傷部位を反映する(Rogaku et al., J. Biol. Chem. 1998)。そこで2nMのCPTのみ添加した細胞と100、250mg/Lの桂枝茯苓丸を添加した細胞核内のγ-H2AXフォーカス数を比較した。【結果】100、250、500 mg/Lの桂枝茯苓丸の添加は細胞増殖に有意な影響を示さなかった。100、250、500 mg/Lの桂枝茯苓丸とCPT 2nMを併用した細胞ではCPT 2nMのみを添加した細胞と比べて増殖を抑えた(それぞれ約20.1、20.1、43.0%、p<0.05)。0.2、2、20 nMのCPTのみ添加した細胞の増殖について調べたところ、20 nMのCPTを添加した場合に細胞増殖を約63.5%抑制した(p<0.05)。100、250 mg/Lの桂枝茯苓丸とCPT 2nMを併用した細胞ではCPT 2nMのみを添加した細胞と比べてそれぞれγ-H2AXフォーカス数が約37.4%、38.3%減少していた。【考察】桂枝茯苓丸は単独では増殖抑制効果を示さなかったものの、CPTと併用した場合には細胞増殖抑制効果を発揮した。また桂枝茯苓丸の添加によりγ-H2AX フォーカス数が減少したことからDNA損傷の増加を抑えれたものと考えられる。以上のことから桂枝茯苓丸を抗がん剤と併用することで抗がん剤の用量を減らし、副作用の低減に役立つ可能性が期待される。