【背景と目的】体内では微量の一酸化炭素(CO)がヘムオキシゲナーゼ(HO)により生合成され、ガス状伝達物質として種々の生理作用に関与することが報告されている。排尿機能制御に関して、COは尿道の平滑筋弛緩因子であると報告されているが、脳内COの役割は不明である。そこで本研究では、脳内COがラットの排尿反射におよぼす影響を薬理学的に解析した。
【方法】ウレタン麻酔下(0.8 g/kg, ip)の雄性Wistar系ラットを用いた。連続膀胱内圧測定(CMG)を開始し、CORM3(COドナー、1 or 10 nmol/rat)またはZnPP(非選択的HO阻害薬、10 or 30 nmol/rat)を脳室内投与し、一部ラットにCORM3(10 nmol/rat)またはZnPP(30 nmol/rat)を静脈内投与した。また、ZnPP(30 nmol/rat)を脳室内投与し単回CMGを実施した。加えて、脳室内投与されたZnPP (30 nmol/rat)の反応に対するCORM3(10 nmol/rat)脳室内前処理の効果を評価した。CORM3またはZnPP投与30分前から投与直前、および投与直後から30分間隔の排尿間隔(ICI:排尿頻度の指標)および最大膀胱排尿圧(MVP:膀胱収縮力の指標)の平均値を求め、そこから薬物投与前後での変化率を算出し比較検討した。
【結果と考察】CORM3脳室内投与は、MVPに影響を与えず用量依存性にICIを延長させた。一方、CORM3静脈内投与では、ICIへの影響はなかったことから、CORM3脳室内投与は中枢性に排尿反射を抑制したと考えられた。ZnPP脳室内投与は、MVPに影響を与えず用量依存性にICIを短縮させた。一方、ZnPPの静脈内投与では、ICIへの影響はなかった。また、ZnPP脳室内投与時の単回CMGでは、排尿効率に影響を与えず、残尿を増加させなかった一方、一回排尿量と膀胱容量を減少させた。以上から、ZnPP脳室内投与は中枢性に排尿反射を亢進させること、中枢の内因性COは排尿反射抑制に関係している可能性が示唆された。さらにZnPP脳室内投与で見られたICI短縮は、CORM3の脳室内前投薬で有意に抑制されたことから、このICI短縮がZnPPによるHO阻害を介した内因性CO産生低下に起因することが示唆された。
【結論】脳内の内因性COは排尿反射を抑制することが明らかとなった。