Na+/Ca2+交換輸送体(NCX)は、3個のNa+と1個のCa2+を交換輸送する細胞膜イオントランスポーターである。この輸送体は通常、細胞膜のNa+濃度勾配に駆動されて細胞内Ca2+を排出しているが、細胞内Na+濃度の増加や脱分極の状況下では、逆に細胞外Ca2+を取り込むことが知られている。近年、NCXはNa+ポンプやNa+透過性チャネルなどと共に細胞膜マイクロドメインに局在し、膜輸送複合体を形成して特殊な高次機能を担うことが示唆されている。これまで、NCXの機能解析は心筋・平滑筋細胞や神経細胞などの興奮性細胞で主に行われており、免疫細胞や内皮・上皮細胞などの非興奮性細胞での機能解析は未だ十分に進んでいない状況である。我々は、NCX1がマクロファージの細胞膜にクラスター状に高発現していることを見出している。本研究では、マクロファージにおけるNCX1の機能的役割を明らかにする目的で、マクロファージ特異的NCX1高発現マウス(CD11b-NCX1-TG)およびマクロファージ特異的NCX1欠損マウス(LysCre-NCX1(f/f)-KO)を作出した。これらマウスの特性解析を進行中であるが、興味深いことに、血管およびリンパ管の形成異常の所見が得られている。具体的には、マウスの下肢足蹠に1%エバンスブルーを注入し、可視化した下肢リンパ管を実体顕微鏡下で観察したところ、CD11b-NCX1-TGにおいて、野生型マウスと比較して太いリンパ管の短径幅の増大が認められた。さらに、リンパ管と伴行する静脈の血管径も野生型マウスと比較して著しく増大していた。一方、LysCre-NCX1(f/f)-KO では、逆に太いリンパ管の短径幅が減少していた。また、大腿部骨格筋の毛細血管密度を免疫染色(α-SMA、CD31)により評価したところ、両マウスにおいて毛細血管密度の異常も認められた。これらの所見は、マクロファージに発現するNCX1が血管形成およびリンパ管形成に密接に関わっていることを示唆している。現在、この分子機序についてさらに追究しているところである。