【背景・目的】急性心筋梗塞治療において、早期の再灌流療法による血流の回復が生命予後の改善に重要である。しかし、心筋組織で虚血再灌流(I/R)障害が生じ、線維化を主体とする心臓リモデリングや心不全の発症増加が問題となっている。これまでに我々は、セレコキシブの構造異性体である2,5-ジメチルセレコキシブ(DMC)が、非虚血性の心臓線維化モデルにおいて心臓リモデリング抑制効果を示すことを明らかにしている。本研究では、I/R障害に伴う心臓リモデリングに対するDMCの効果について検討した。
【方法・結果】雄性C57BL6マウスの左前下行枝を30分間結紮後、再灌流してI/Rモデルを作製した。VehicleまたはDMC(150 mg/kg)を覚醒直後に経口投与し、その後摂餌投与(DMC: 1000 ppm)した。モデル作製1~4週間後のエコー評価において、DMC投与群ではVehicle投与群と比較して有意な駆出率の増加、左室拡張期・収縮期径の減少が確認され、I/R障害による心機能低下に対してDMCは抑制効果を有することが示唆された。I/R処置3日後の心臓において、筋線維芽細胞のマーカーであるa-smooth muscle actinのタンパク質発現がDMC処置により有意に減少しており、線維化に関連するfibronectin、connective tissue growth factor、matrix metalloproteinase-9のmRNA発現も有意に低下していた。また、I/R処置4週間後の心臓切片のマッソン・トリクローム染色にて、DMCによる有意な線維化面積の減少効果を確認した。
【考察】本研究より、DMCは筋線維芽細胞の発現を減少させ、I/R障害に伴う線維化や心機能の低下を抑制することが明らかになった。DMCは、急性心筋梗塞に対する再灌流療法後の心不全発症予防に有用であることが示唆された。