背景・目的
栄養素は血液脳関門(BBB)に発現する種々のトランスポーターを介して脳内へ能動的に取り込まれる。中でも、ドコサヘキサエン酸(DHA)は多くの神経学的機能に重要とされており、加齢に伴う脳内DHA量の低下は記憶や認知機能障害と関連している。DHAの 循環血中から脳内への移行にはBBBに発現する輸送担体が関与しており、エステル型DHAの輸送担体であるMFSD2Aや非エステル型DHAの輸送に関与する脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)を介して脳内へ取り込まれる。BBBのバリア機能は加齢に伴い変化することが報告されているが、BBBを介したDHA脳内移行に対する加齢の影響は明らかにされていない。
方法
2、8、12、24ヶ月齢の雄C57BL/6マウスを使用し、in situ経心臓的灌流法を用いてRIラベル化された非エステル型DHA([14C]DHA)の脳内取り込みを評価した。また、ラットから単離した初代培養脳血管内皮細胞を用いて、siRNAによるMFSD2Aノックダウンが[14C]DHAの細胞内取り込みに与える影響を評価した。
結果
2ヶ月齢のマウスにおいて、[14C]DHAの脳移行は過剰量の非ラベル化DHAによって阻害された。脳血管内皮細胞へMFSD2A siRNAを遺伝子導入することで、MFSD2Aタンパク質発現量及び[14C]DHAの細胞内取り込みは減少した。2ヶ月齢のマウスと比べ、12及び24ヶ月齢マウスは[14C]DHAの脳内移行と脳微小血管におけるMFSD2Aタンパク質発現量の減少が認められた。一方で、FABP5タンパク質発現量は加齢に伴い増加した。
結論
これらの結果は、BBBにおける非エステル型DHAの脳内移行にMFSD2Aが関与していることを示唆している。また、 非エステル型DHAの脳内移行は中高齢及び老齢マウスにおいて減少し、これにはFABP5ではなく MFSD2Aの加齢に伴う発現量減少が関与していることが示唆される。