我々は、セレコキシブ誘導体でありシクロオキシゲナーゼ阻害作用を持たない2,5-ジメチルセレコキシブ(DMC)が線維芽細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制することによって心臓リモデリングを抑えることを報告した。マクロファージは心筋梗塞後の線維化過程において重要な役割を担うことが知られているが、我々はDMCの免疫応答への影響については検討していない。そこで今回、冷凍焼灼心筋梗塞マウスモデルを用いてDMCのマクロファージに対する効果を検討した。液体窒素で冷却したアルミニウム棒で雄C57BL/6マウスの左室前壁を冷凍焼灼し心筋梗塞モデルを作成した。DMC(1000ppm)またはVehicleは梗塞作成3日前から摂餌投与した。処置後、心エコーで心機能を、摘出心断面で線維化面積を評価した。梗塞部位でのマクロファージをCD68の発現で、炎症性マクロファージ(M1)、抗炎症性マクロファージ(M2)をそれぞれCD86、CD163 の発現で評価した。また、梗塞部位での炎症性サイトカインをmRNAのリアルタイムPCRで評価した。以前の報告と同様に、DMC投与により心機能の低下が抑制され、処置14日目の摘出心断面で線維化面積の減少が確認できた。またDMC投与により、処置3日目の梗塞部位でのマクロファージ集簇(CD68陽性細胞)が増加していたが、炎症性マクロファージ(M1:CD86陽性細胞)に変化はなく、抗炎症性マクロファージ(M2: CD163陽性細胞)の集簇が増加することが明らかとなった。また梗塞部位では、DMC投与により炎症性サイトカインであるIL-1β、IL-6、MCP-1のmRNA発現が抑制されていた。以上の結果から、DMCはM2マクロファージ集簇促進と炎症性サイトカインの産生減少により、心筋梗塞後の心機能低下抑制と線維化抑制作用に寄与する可能性が示唆された。従って、DMCは心臓線維化抑制の可能性による心臓リモデリング治療における有用性を持ちうると考えられた。