[背景・目的] 糖尿病は急性腎障害の重要な危険因子である。以前我々は腎虚血再灌流 (ischemia-reperfusion:I/R) に際する腎尿細管細胞のオートファジー活性化が糖尿病モデルラットでは減弱していることが、I/R後の腎障害の増悪に寄与することを報告した。プログラムされた細胞死であるネクロプトーシスは急性腎障害に重要な役割を果たすことが知られているが、これらとオートファジーの関連は不明である。本研究では糖尿病モデルにおいて、腎I/Rにおけるオートファジーとネクロプトーシスの関連を調べた。
[方法・結果] 肥満2型糖尿病モデルラットであるOLETFとその対照ラットLETOを用いた。麻酔下に右腎を摘出し (Pre)、引き続き左腎の茎部を30分クランプ、その後クランプを開放して虚血再灌流 (I/R) モデルを作成した。I/R後24時間の時点で左腎を摘出し (I/R)、血清を得た。LETOにおいて、オートファジーを阻害する目的でクロロキン (10 mg/kg/day) をI/R前の7日間にわたり皮下持続投与した。OLETFにおいてオートファジーを活性化する目的で、ラパマイシン (0.25 mg/kg) を左腎虚血の30分前に腹腔内投与した。I/R 24時間後の血清クレアチニン値 (sCr) は、LETOと比べてOLETFで高値だった。またsCr は、LETOへのクロロキン投与により増加、OLETFへのラパマイシン投与により低下した。腎組織を用いたウエスタンブロットでは、ネクロプトーシスに関わるシグナルであるRIPK1、RIPK3、MLKLの蛋白量はいずれも、LETO、OLETFともに、Preと比較してI/Rで上昇していた。I/R後の腎臓ではRIPK3の蛋白レベルがLETOよりもOLETFでより高値だった。RIPK3蛋白レベルはLETOへのクロロキン投与でも増加していた。OLETFへのラパマイシン投与により、IR後の腎でRIPK1とRIPK3の蛋白レベルが低下した。
[結論] 以上の所見から、I/Rによるオートファジー活性化が減弱している糖尿病腎では、オートファジー障害がネクロプトーシス経路の亢進に寄与し、急性腎障害の増悪に関与する可能性が示唆された。