臨床的にアミド型局所麻酔薬リドカインは血管収縮作用が無く、アドレナリンを添加してその効果時間を延長させている。L-DOPAは、生体内でGPR143受容体に結合し、α1受容体を介して、血管収縮することが報告されている。しかし、L-DOPAのリドカイン局所麻酔薬効果時間に関する影響については不明な点が多い。また、末梢における血管収縮作用に関与するα2、α1受容体等への作用機序は、詳細な検討が行われていないままである。
 刈毛したHartley系雄性モルモット(体重300-350g)の背部に、 0.25%リドカインに様々なα受容体等のリガンドを添加し、0.1mずつランダムかつ盲目的に皮内注射する。できた膨疹の周囲をマーキングし、膨疹外に正常の皮膚収縮反応があることを確認した後に、5分ごとに3〜5秒間隔で6回の皮膚刺激を与える。刺激に対して反応しなかった数を測定し、時間及び合計したものを、麻酔効果を示すスコア(局麻スコアとする)として比較検討した (モルモット丘疹法)。
 L-DOPAは濃度依存性にその麻酔持続時間を延長した。L-DOPAに、ドパ脱炭酸酵素阻害薬のcaribidopa(10μM)を添加するとリドカインの局所麻酔効果時間を延長した。L-DOPA受容体GPR143の阻害剤1μM DOPA CHEは1μM L-DOPAによるリドカインの局所麻酔効果時間延長を抑制した。
 0.25%リドカイン + 1μM L-DOPAに、以下の薬物、1μM ヨヒンビン、1μM プラゾシン、25μM  JP1302、10μM  BRL44408、10μM インドラミン、0.25μM BMY7378、5μM サイクラゾシン、1nM シロドシンをそれぞれ混合後、その効果を検討した。その結果、10μM BRL44408、0.25μM BMY7378以外の薬物がリドカイン + 1μM L-DOPAの麻酔持続時間を短縮した。
以上の結果より、リドカイン + 1μM L-DOPAの末梢における血管収縮作用には少なくとも、α2C、α1A、α1B受容体を介していることが示唆された。