北海道産のハスカップは抗酸化物質を多く含む果実として抗脂肪蓄積効果および抗炎症効果が期待されている。それらの効果はハスカップの成分であるアントシアニン系のCyanidine-3-glucoside(C3G)に特に効果があることが見出されている。我々はこれまでマウスの脂肪前駆細胞が脂肪細胞に分化する過程で脂肪酸結合タンパク質aP2が上昇することを報告してきた。aP2の上昇は脂肪蓄積と密接に関連し、脂肪蓄積や肥満は慢性炎症につながることと脂肪細胞以外では免疫細胞に高く発現していることから、マウスRAW264.7細胞を用いてaP2の発現挙動を検討した。
RAW細胞にC3Gを添加後、細胞生存率をMTT法で測定した。RAW細胞にC3G添加後、TotalRNAをRNAisoplusで抽出した。抽出したTotalRNAからcDNAを、PrimeScriptTM RT reagent kitで合成した。合成したcDNAを用いRT-PCRを行なった。RAW細胞にaP2プロモーターを含むベクターをLT-1遺伝子導入試薬で導入した。遺伝子導入1日後で、C3G、LPSを添加し、その1~2日後、プロメガのルシフェラーゼアッセイキットでaP2プロモーター活性を測定した。
C3G添加によるRAW細胞への細胞毒性をMTT法で測定した結果、C3Gの濃度変化によるRAW細胞の細胞死は見られなかった。RT-PCRの結果からC3GをLPS刺激RAW細胞に添加すると、LPS刺激により上昇した炎症性サイトカインおよびaP2の発現抑制が見られた。C3GによるaP2発現抑制機構について検討するためaP2プロモーター活性への影響について検討したところ、C3GによりaP2プロモーター活性の抑制が見られた。
C3GはRAW細胞におけるaP2発現の調節に関与することが示唆された。低濃度C3GはLPS刺激RAW細胞のaP2発現上昇を抑制した。抑制に関わるaP2プロモーターのdeletion mutantsを作成し、C3Gを作用させ、328bpのプロモーター領域が重要であることが示唆された。
C3Gは炎症関連物質であるaP2の発現を抑制することで、免疫細胞による炎症作用を抑制できることが示唆された。