小胞体で合成された分泌タンパク質は、小胞輸送によってゴルジ体へと運ばれ、様々な修飾がなされたのち、細胞膜から分泌される。小胞体からの分泌タンパク質の出芽は、小胞体上の特殊なドメインであるER exit siteからCOPII被覆小胞によって担われる。ER exit siteは哺乳細胞1細胞あたり数百個存在するが、細胞周期や栄養状態に応じて、その数や大きさ、局在が変化することが知られている。しかしながら、どのようにしてER exit siteの形成が制御されているのか、詳しいメカニズムはほとんど明らかになっていない。
われわれはコラーゲンの分泌に必要な小胞体膜タンパク質TANGO1を単離・同定し、機能解析を行ってきた。TANGO1はGWAS解析により、冠動脈疾患、冠動脈性心疾患、心筋梗塞を含む複数の心臓病との関連性が示唆されているが、その関連性は不明である。最近われわれはTANGO1がコラーゲン分泌のみならず、COPII被覆因子の足場タンパク質であるSec16と協調することで、ER exit site形成の局在規定因子としてはたらくことを見出した。さらにTANGO1のリン酸化が細胞周期依存的に調節されることで、細胞分裂期のER exit siteの崩壊と、間期におけるER exit siteの再形成を制御していることを明らかにした。