マクロファージは、炎症促進型のM1マクロファージと組織修復型のM2マクロファージに大別される。M1マクロファージはIFN-γなどにより誘導され、炎症性サイトカインを介して炎症反応を促進する。一方、M2マクロファージはIL-4などにより誘導され、抗炎症性サイトカインなどを介して炎症の収束および組織修復に関与する。M1/M2マクロファージのバランスは炎症と組織修復の調節において重要であると考えられるが、M1/M2マクロファージ分化調節機構の詳細なメカニズムについては未だ不明な点が多い。我々はこれまでに、IL-4によるM2様マクロファージの誘導がIFN-γの同時処理よって増強されることを見出している。そこで本研究では、この現象に着目しM2マクロファージの新規誘導法の確立とそのメカニズムの解明を試みた。
RAW264.7マクロファージをIFN-γ (40 ng/mL) およびIL-4 (40 ng/mL) で刺激し、M1マクロファージのマーカー (M1マーカー) であるCD86および誘導型一酸化窒素合成酵素 (iNOS) とM2マクロファージのマーカー (M2マーカー) であるArg-1およびCD206のタンパク質発現をフローサイトメトリーおよびウエスタンブロッティング法により解析した。またmRNAの発現をRT-qPCR法により解析した。
IFN-γおよびIL-4は、それぞれM1マーカーおよびM2マーカーの発現を上昇させた。一方、細胞をIFN-γで前処理した後、IFN-γ非存在下にてIL-4で刺激すると、前処理しなかった場合と比べ、M2マーカーの発現が著しく上昇した。また、IFN-γで前処理した細胞では、前処理しなかった場合と比べ、IL-4受容体の発現が有意に上昇していた。以上の結果から、マクロファージをIFN-γで前処理すると、M2マクロファージへの分化が通常よりも強く誘導されると考えられる。このメカニズムには、IL-4受容体発現の上昇が関与しており、IL-4受容体シグナルが増強されたことによりM2マーカーの発現が強く誘導されたと推察される。