加齢による骨格筋量の減少と筋力の低下はサルコペニアと呼ばれ、健康寿命短縮の要因である。オートファジー活性は加齢に伴い低下すること、オートファジー実行因子を欠失したマウスの骨格筋では筋萎縮が起きることが知られており、加齢によるオートファジー活性の低下はサルコペニアの発症に関与する可能性がある。一方、脱アセチル化酵素SIRT1はオートファジーを正に制御する。以前我々は、SIRT1活性化薬であるレスベラトロール(RSV)の処置は筋ジストロフィーモデルマウスの筋量と筋機能を維持することを報告した。本研究の目的は、加齢に伴うサルコペニアに対するSIRT1活性化の効果を検討することである。
野性型マウスに23週齢から通常食またはRSV (0.4 g/kg diet) 含有食を37週間投与した。ロータロッドテストの走行時間は加齢に伴い両群で短縮したが、50週齢の時点では通常食群と比較してRSV群で有意に延長した。60週齢の時点で通常食群 (60 wo) またはRSV群 (60 wo+RSV) から骨格筋を採取して、20週齢のマウス (20 wo)と比較した。HE染色で評価した前脛骨筋の筋線維径は、20 woと比較して60 woで縮小したが60 wo+RSVで維持された。ウエスタンブロットで評価したアセチル化蛋白は20 woと比べ60 woで増加し、その増加はRSVにより抑制されたことから、SIRT1活性の加齢による低下とRSVによる回復が示唆された。20 woと比べて60 woではオートファジー活性の指標であるLC3-II/LC3-I比や免疫染色によるLC3 dot量は低下、オートファジーにより分解されるp62蛋白やユビキチン化蛋白レベルは増加しており、加齢によるオートファジー活性の低下が考えられた。これらの指標は60 wo+RSVで改善がみられ、オートファジー活性の回復が示された。60週齢の野生型マウスと比較して骨格筋特異的SIRT1ノックアウトマウスの前脛骨筋では、筋繊維径の縮小、アセチル化タンパク量の増加、そしてオートファジー活性の低下が見られた。
これらの結果から、SIRT1活性の低下によるオートファジー活性の低下が加齢に伴うサルコペニアの発症に関与すること、そしてSIRT1の活性化はオートファジー活性を維持して加齢によるサルコペニアを軽減することが示唆された。