【背景・目的】臨床においてAnaphylaxis(ANA)時に心筋虚血が誘発されるKounis症候群が紹介されており冠攣縮が原因とされている。私達は、ratsへのANA誘発時のECGの波形にST-segmentの上昇が観察されることを報告しており、心筋虚血を示唆している。本研究ではratを用いて、非選択的P2受容体遮断薬Suramin(SR)を用いて、投与タイミングによるST-segmentおよび血圧に対する影響を検討した。
【方法】Wistar雄ratを用いSalineを対照とし100・300 µmol/l(rat循環血液量)のSR100とSR300それぞれの投与量を設定した。Mast cellの脱顆粒誘発にはCompound48/80(C48/80)を用いた。実験群はratsへの SR投与はC48/80投与してANAを誘導する30分前から20分間かけて持続静注したものと、C48/80投与と同時に20分間かけてSRを持続静注したものとし、C48/80投与前後30分間についてECG、血圧を経時的に記録した。
【結果】C48/80投与後、ECGの波形においてQ波をベースラインとしたS波の電位差が上昇しST-segmentの上昇が観察された。C48/80処置によりANAを誘発する前にSRを投与した群とANA誘導と同時にSRを投与したいずれの群においてもC48/80投与後のST-segmentの上昇の抑制が観察された。血圧に関してはC48/80投与後の血圧低下においてSR300の前投与および同時投与においても、ANA誘導後の血圧低下反応を遅延させた。
【考察】SuraminによりANA誘導時のST-segmentの上昇抑制が観察されたことは、P2受容体遮断作用が部分的に関与している可能性が考えられた。