【目的】
桑葉(Mulberry leaf : ML)は、以前より高血糖に対する民間薬として用いられてきた。今回我々は、ML粉末について脂質代謝に対する影響を探索する目的で、脂肪肝モデル、NASHモデルマウスを作成しておもに肝臓の病変に対するMLの予防効果を検討した。
【方法】
脂肪肝モデル: C57BL/6Jマウス(6週齢:♂)をコントロール群、脂質、糖質を高配合した飼料(Western Diet : WD)を投与したWD群、WD飼料をベースに1%(W/W)配合したML群の3群に分けた(n = 8)。約80日間飼育し、血漿生化学検査、肝臓組織検査、RNA-seqによる網羅的な遺伝発現子解析を実施した。
NASHモデル:C57BL/6Jマウス(幼齢:♂)に低用量のストレプトゾトシン処理と高脂肪食給餌によるNASH群、NASH+ML(1%)群、コントロール群の3群に分けた(n = 6)。飼育8週目に解剖し、血漿生化学検査、肝臓組織検査を実施した。
【結果】
脂肪肝モデル:ML群で肝臓組織の脂肪沈着、血漿中の中性脂肪(TG)、AST、ALT値の抑制がみられた。RNA-seqによる肝臓の遺伝子発現解析では、WD群とML群で、227/45,706個の遺伝子が有意な発現変動を示した(FDR < 0.001)。とりわけ、Lpin1、Scara5などの肝臓の炎症に関連深い遺伝子の正常化がみられた。
NASHモデル:ML群で延命効果が確認された。血漿中のTG値の抑制、肝臓中Lipin1遺伝子の上昇、肝臓組織検査では、NASH群で100%(6/6)の肝細胞がんが認められたのに対し、ML群では肝細胞がんの発生は認められなかった。
【考察】
2つの高脂肪食に起因するマウスモデルに対して、桑葉の投与により抑制が認められた。特に、肝臓中のさまざまな遺伝子の調節により脂肪肝を予防し、NASHモデルにおいては肝細胞がんへの病態の進展を予防したことから、生活習慣(食事)に伴うメタボリックシンドロームなどへの応用が期待される。