骨の構造維持には、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収の活性バランスが重要である。骨芽前駆細胞の表面にはシグナル受容器・一次繊毛が形成し、一次繊毛がヘッジホッグ (Hh) などの分化シグナルを受容する。その結果、骨芽前駆細胞は骨芽細胞に分化 (骨芽細胞分化) するため、骨形成が進行する。しかし、骨形成の分子制御機構には未解明のことが多い。膜裏打ちタンパク質4.1Gは細胞膜直下でアクチン細胞骨格と結合し、膜タンパク質の細胞膜局在や機能を制御する。様々な組織に発現するが、骨における発現や役割は分かっていない。我々は最近、骨芽前駆細胞に4.1Gが発現することを見出したため、本研究では、骨形成において4.1Gが果たす役割を一次繊毛に注目して検討した。まず、4.1Gノックアウト (KO) マウス由来新生仔脛骨では、骨梁表面のカルシウム沈着が野生型に比べて低下したことより、4.1Gは骨形成促進作用のあることが考えられた。次に、マウス骨芽前駆細胞株 (MC3T3-E1) を20日間分化誘導したところ、4.1G発現量は4日目までは変化せず、それ以降で急激に減少した。一方、一次繊毛は4日目で顕著に伸長したが、以降徐々に伸長測度は減少した。このことから、分化誘導初期に4.1Gが一次繊毛形成を促進する可能性が考えられた。そこで、マウス由来新生仔脛骨において一次繊毛形成を検討したところ、4.1G-KOでは一次繊毛形成細胞数の減少が確認された。MC3T3-E1細胞中に4.1Gをノックダウン (KD) しても同様に、一次繊毛形成細胞数が減少した。さらに、MC3T3-E1細胞における一次繊毛由来Hhシグナルと骨芽細胞分化は、いずれも4.1G-KDによって抑制された。以上の結果から、4.1Gは骨芽前駆細胞中で一次繊毛形成を促進し、骨芽細胞分化シグナルを介して骨形成を進行することが示された。