プロポリスは、自然界においてみつ蜂により収集される天然物であり、Brazilian green propolisは少なくとも200種類以上の天然物(主に、樹脂、蜜蝋、エッセンシャルオイル、フェノール性物質など)により構成される。これまでの報告では、プロポリスには神経保護効果があることが報告されており(Shimazawa et al., 200)、プロポリスの活性成分として、 Caffeic acid、phenethyl ester、pinocembrin、galanginなどが確認されている (Ilhan et al., 2004; Liu et al., 2012; Lei et al., 2012)。興味深いことに、様々なタイプのプロポリス(water-soluble derivatives of propolisもしくはIndian propolis)は、哺乳類における認知機能との関連性が報告されており (Chen et al., 2008; Nanaware et al., 2017)、「プロポリスの認知機能改善効果とその活性成分の解明」が期待される。我々は、認知症既存薬であるメマンチンによる認知機能改善効果の新たな治療標的としてATP感受性K+(KATP)チャネル抑制効果を報告した(Moriguchi et al., Mol. Psychaitry 2018)。メマンチンによるKATPチャネル抑制作用では、KATPチャネル抑制作用により神経細胞膜の閾値上昇を惹起し、L型Ca2+チャネルを介して細胞内のCa2+濃度を上昇させ、記憶学習に必須の分子であるCaMキナーゼIIを賦活化することにより記憶学習を改善する。さらに、メマンチンによるKATPチャネル抑制効果は、プロポリスとの併用適用により、認知機能改善効果が増強することを同定した(Moriguchi et al., Mol. Neurobiol. 2022)。本発見は、プロポリスが認知症の予防・治療への適応の可能性が示唆される。