【背景】神経変性疾患では神経の脱落や炎症の他にアミロイド、タウ、TDP-43と言ったミスフォールディングタンパク質が蓄積する。ミスフォールディングタンパク質はβシートが規則正しく並んだクロスβ構造と呼ばれる構造を形成し、チオフラビンTなどのクロスβリガンドと呼ばれる化合物で染色される特徴などがある。従来これらは死後の剖検脳によってでしか検出することができなかったが、近年、陽電子断層撮影法(PET)を用いることでアミロイド・タウなどのミスフォールディングタンパク質の蓄積を画像化出来るようになった。
その中でもレビー小体型認知症(DLB)に蓄積するクロスβ構造を持つα-Synucleinは~100 pmol/g tissue程度(Bmaxに相当)であり、AD患者のアミロイド(Aβ)の1/10かそれ以下である。また、レビー小体型認知症(DLB)では85 %がAβの沈着を、30 %がタウの病理を認めることから高い結合選択性が求められる。
そこで本研究ではアストロサイトで発現するMAO-B特異的PETトレーサー[18F]SMBT-1を用いて結合性の評価を行い、未だ開発段階のα-Synuclein PETトレーサーの代替バイオマーカーへの活用といった有用性を明らかにすることを目的とした。
【方法】Lewy小体のみが蓄積していることを確認したレビー小体型認知症(DLB)の凍結脳を使用し、アストロサイトに発現するMAO-B PETプローブである18F-SMBT-1を用いてBinding assayを行った。
【結果】MAO-Bトレーサー[18F]SMBT-1のBinding assayにおいてcontrolである正常な人の脳とDLBの患者の脳ホモジネートではp = 0.0159と有意差が認められた。
【結論】正常な人とDLB患者ではMAO-Bの発現量が異なることから、[18F]SMBT-1がDLB患者のPETバイオマーカーとして有用である可能性が示唆される。
しかし、今回はMAO-Bの分布を確認はしていないため、オートラジオグラフィーや免疫染色を行い、MAO-Bの結合部位とα-synuclein集積部位が重なるかという検討やMAO-Bの発現量はPETで画像を得ることが出来うるかを生化学的解析で確認する必要があると考えられる。