医薬品の研究開発において、臨床試験の成功確率向上は重要な課題と考えられている。特にPhase IIからPhase IIIへ移行する確率は近年でも25%前後とほぼ横ばいである[1]。Phase IIで開発中止となる要因の7割以上は薬効および毒性に分類されている[1]。
Microphysiological system (MPS)は、近年の細胞培養技術や組織工学の進展に伴い、これまでの培養法にはなかった三次元、共培養、灌流付与などを可能としたシステムである。細胞が高機能化することや長期培養が可能になる事によって、従来の培養法よりもヒトの生体に近い反応を捉えられることが期待されている。MPSの毒性・薬効評価への有用性の認知度は高まっており、製薬企業においても実際の創薬に活用され始めている[2]。我々のグループでは、これまで、3D-バイオプリント肝臓モデルの評価[3]や尿細管虚血再灌流モデルの開発[4]といった研究活動をおこなってきた。本発表では、検討事例とともに、これまでの経験から得られた課題やMPSの創薬活用に当たっての考え方について紹介する。
【Funding】Astellas Pharma Inc.
【Reference】
1. Dowden H et al., Nat Rev Drug Discov. 2019; 18(7):495-496
2. Baran SW, et al. ALTEX. 2022;39(2); 297-314
3. Tetsuka K et al., Biol. Pharm. Bull. 2020;43(3):375-383
4. Vormann M et al., Kidney360. 2022; 3:217-231