【背景】アミオダロン静注薬の本邦における保険適用は心室性不整脈に対する治療に限られ、心房細動には認められていない。アミオダロン静注薬の抗心房細動作用特性を明らかにするため、我々がこれまでに動静脈瘻(aorto-venocaval shunt: AVS)術を用いることで構築した心房細動持続時間が異なる2つの動物モデルを用い、アミオダロン静脈内投与による抗心房細動作用を比較検討した。
【方法】Wistarラットを麻酔下で開腹し、腹部大動脈−下大静脈間にAVSを作製し、浸透圧ポンプを腹腔内に留置して閉腹した。アルドステロンを充填した浸透圧ポンプの有無によりラットを2群 (AVS群:n=6、AVS+Aldo群:n=3)に分けた。術後25-28日の時点でラットを麻酔し、心房中隔に留置した電極カテーテルにより電気生理学的評価を行い、アミオダロン(10, 20 mg/kg)静脈内投与の効果を検討した。
【結果】AVS+Aldo群では、バーストペーシング誘発心房細動の持続時間はAVS群に比べて約16倍長く、P波幅、PR間隔およびQT間隔の有意な延長と心房有効不応期(AERP)の有意な短縮を伴っていた。AVS群に投与した高用量のアミオダロンはP波幅、QRS幅、PR間隔、QT間隔およびAERPを有意に延長させ、その変化量はそれぞれ+5 ms, +3 ms, +7 ms, +14 msおよび +44 ms であった。一方で、AVS+Aldo群における同用量のアミオダロンによる各指標の変化量はそれぞれ+1 ms, ±0 ms, −2 ms, +21 msおよび+37 ms であり、QT間隔のみが有意に延長した。バーストペーシング誘発心房細動の発生率と持続時間は両群においてアミオダロンの用量依存的に減少し、AVS群およびAVS+Aldo群における高用量での心房細動持続時間の短縮率はそれぞれ69%と94%であった。
【結論】アミオダロンの静脈内投与は、両群において抗心房細動作用を示した。特にAVS+Aldoラットでアミオダロンが心臓内伝導に関連する心電図指標に影響を与えることなく抗心房細動作用を発揮したことは、心房細動に対するアミオダロン静注薬の作用特性として安全性の観点から興味深い知見である。