【背景】Hepatocyte growth factor(HGF)/c-METシグナルは抗がん剤ターゲットとして注目されている。我々はこれまでに関節リウマチ (RA)の滑膜における単球遊走とHGF/Metシグナルに注目し、RA患者の滑膜線維芽様細胞(RAFLS)および関節炎モデルマウスを用いて、HGFがRA滑膜で炎症刺激により産生され、自身のケモカイン作用および滑膜のケモカイン産生の亢進を介した作用により、炎症部位への単球遊走を活性化し、炎症性骨破壊を促進することを明らかにした。そこで本研究は、RAにおける血管新生におけるHGF/Metシグナルの役割を明らかにすることを目的とした。【方法】DMARDs治療抵抗性のRA患者の血清中HGF、CXCL16をELISAで測定した。RA滑膜組織における c-Metの発現を免疫染色で評価した。既報のRA滑膜のsingle cell RNA sequence(scRNAseq)を再解析し、MET発現線維芽細胞の特徴を検討した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をrhHGF刺激しHGFの遺伝子発現およびCXCL16産生をqPCR、ELISAで測定した。さらにrhTNFα刺激下でc-METシグナル阻害剤SU11274によるRA FLSからのCXCL16産生への影響をELISAで測定した。in vitroマトリゲルアッセイによりHUVEC管腔形成におけるrhHGFの作用を検討した。【結果】治療抵抗性RAの血清中HGFは、CXCL16と有意な正の相関を示した。 c-MetはRA滑膜の血管内皮細胞で発現を認めた。RA滑膜のscRNAseqの再解析では、MET高発現のHG F応答性の高い線維芽細胞集団が存在していた。さらにCXCL16の遺伝子発現量は、MET非発現細胞よりもMET発現細胞で有意に高かった。HUVECのrhHGF刺激はHGF遺伝子発現を亢進し、CXCL16産生を用量依存的に増加した。SU11274によるc-Metシグナル阻害は、RAFLSによるTNF-α誘導性のCXCL16産生を用量依存的に抑制した。さらにマトリゲルアッセイにおいてrhHGFはHUVECの管腔形成を1.8倍亢進した。【結論】RAにおいて、HGFは滑膜の炎症によって滑膜線維芽細胞および血管内皮細胞より産生され、自身の血管新生作用とCXCL16の産生亢進を介して血管新生を促進する。