【目的】好酸球性筋膜炎(EF)は,四肢の筋膜に好酸球が中心の炎症細胞浸潤と筋膜線維芽細胞の増殖を引き起こす稀な自己免疫性疾患であり,その病態形成メカニズムは不明である.そこで本研究では,筋膜線維芽細胞を中心としたサイトカインネットワークによる好酸球およびTh2細胞の筋膜への遊走および活性化メカニズムを明らかにする.
【方法】IL-5抗体mepolizumab単剤で寛解導入したEF症例の末梢血T細胞分画および血清サイトカインの経時変化をFCMおよびELISAで検討した.また,EF症例の筋膜組織におけるCD4,CCR3,IL-4Rの免疫染色を行った.その後,既報のEF由来筋膜線維芽細胞のsingle cell RNA sequence(scRNAseq)を再解析し,病態形成に特徴的な細胞サブセットを検討した.そして2例のEF患者由来の筋膜線維芽細胞をrecombinant IL-4で刺激し細胞増殖能ならびにIL-4R,CCR3 ligandsの遺伝子発現をqPCRで測定した.さらに筋膜線維芽細胞を治療前EF患者血清,寛解後EF患者血清,健常者血清で刺激しマイクロアレイで発現変動遺伝子を検討した.
【結果】mepolizumab治療による臨床症状の改善に伴い,血清中IL-4,TNFαが低下し,末梢血のCCR3+Th2細胞の割合とそのKi-67陽性細胞が減少した.EFの筋膜組織ではCCR3+CD4+T細胞の強い浸潤と筋膜線維芽細胞のIL-4R,CCR3の発現を認めた.EF由来筋膜線維芽細胞のscRNAseqの再解析では,IL4R,TNFR1高発現のIL-4,TNFα応答性の高い線維芽細胞集団の存在が特定された.筋膜線維芽細胞はIL-4刺激で細胞増殖能が亢進し,IL-4R,CCL7,CCL11,CCL26の遺伝子発現が増加した.また血清刺激による発現変動遺伝子の網羅的検索では,Th2活性化を誘導するOX40LをコードするTNFSF4の遺伝子発現が,治療前EF患者血清の刺激で特徴的であった.また,TNFSF4発現上昇はTNFα刺激により再現された.
【結論】EFにおいて,好酸球およびTh2細胞の産生するIL-4が筋膜線維芽細胞の増殖とCCR3 ligands産生を増強し,好酸球およびCCR3陽性Th2細胞の筋膜への遊走を促進する.さらに筋膜線維芽細胞はTNFαで誘導されるOX40Lを介してTh2活性化を引き起こす.