【背景・目的】心房細動(AF)はそれ自体が心房の電気的リモデリングを促進し、リガンド非依存性のIK,ACh活性を増加すると報告されている。我々は、心房選択的K+電流IK,ACh, IKur, Ito阻害薬AVE0118が持続性AFを停止したが、発作性AFを抑制しないことから、IK,AChがAFの持続に重要であることを示した。Oseltamivirはモルモット単離心房筋の静止膜電位を脱分極方向へ変化し、活動電位持続時間を延長した。IK,ACh阻害作用が期待されるので、その電気生理学的作用および抗心房細動作用を評価した。
【方 法】①パッチクランプ法を用いて、IK,ACh (n=3), IKur (n=3), IKr (n=6), INa (n=6)およびICaL (n=6)に対するoseltamivirの作用を評価した。②慢性房室ブロック犬の心房を6週間以上高頻度電気刺激し、持続性AFを誘発した。この持続性AFモデル犬に無麻酔下で3 (n=6)または30 mg/kg (n=7)のoseltamivirを静脈内投与し、AF停止効果を評価した。③イソフルラン麻酔下の慢性房室ブロック犬に3および30 mg/kgのoseltamivir (n=6)を静脈内投与し、電気生理学的指標および心房を10秒間高頻度電気刺激することにより誘発される発作性AFの持続時間を評価した。
【結 果】①OseltamivirのIK,AChおよびIKrに対するIC50値はそれぞれ160および231 µMであった。1,000 µMのoseltamivirはINa, ICaLおよびIKurをそれぞれ22%, 19%および13%抑制した。②Oseltamivir 3 mg/kgは1/6例(17%)、30 mg/kgは6/7例(86%)において持続性AFを停止した。③Oseltamivirは用量依存的に、心房間伝導を遅延し、心房有効不応期を延長し、発作性AFの持続時間を短縮した。
【結 論】OseltamivirはIK,AChおよびIKrに加えINaを抑制することにより、心房間伝導を遅延し、心房有効不応期を延長することで、持続性AFだけでなく発作性AFを効果的に抑制した。その抗心房細動効果は既存のクラスⅠおよびⅢ群薬より強力であったことから、強力なIK,ACh阻害作用に加え、IKr, INa, ICaLも抑制するマルチチャネル遮断薬がAFの停止に有効と考えられる。