【目的】インドキシル硫酸は、尿毒症物質の一つで、種々の生理機能へ影響を及ぼす。血管機能において、我々は、インドキシル硫酸の急性処置によりラット胸部大動脈や、上腸間膜動脈における内皮依存性弛緩反応を減弱させること、胸部大動脈におけるエンドセリン-1 (ET-1) の収縮を増大させることを明らかとした。しかしながら、プリノセプターリガンド誘発収縮反応に対するインドキシル硫酸急性処置の影響については不明であるため、今回、ラット腎動脈を用いて検討した。【方法】雄性 Wistar ラットより、腎動脈を摘出し、インドキシル硫酸を 1 hr 処置した後、収縮反応について検討した。【結果・考察】High K+、フェニレフリン (PE)、トロンボキサンアナログ (U46619) 誘発収縮は、対照群とインドキシル硫酸 (1.0 mM) 処置群で変化が認められなかったが、ET-1 誘発収縮は、インドキシル硫酸 (1.0 mM) 処置群で、ET-1 (10 nM) にて有意に増大した。一方、対照群と比較し、アデノシン三リン酸 (ATP)、ウリジン三リン酸 (UTP)、ウリジンアデノシンテトラフォスフェート (Up4A) による収縮反応は、インドキシル硫酸 (1.0 mM) 処置群にて減弱が認められた。Up4A (20 microM) による収縮は、インドキシル硫酸 0.25 mM では影響なかったが、0.5 mM で減弱傾向、1.0 mM で有意な減弱が認められた (vs. control)。また、UTP (100 microM) による収縮は、インドキシル硫酸 0.25 mM より減弱が認められた (vs. control)。インドキシル硫酸による Up4A、UTP 誘発収縮反応の減弱は、CH223191 (aryl hydrocarbon receptor antagonist) による影響は認められなかったが、ARL67156 (selective NTPDase inhibitor) により、これらの収縮反応のインドキシル硫酸による減弱は消失した。以上のことから、腎動脈におけるインドキシル硫酸処置による血管収縮反応への影響は、リガンド特異性があること、プリノセプターリガンドによる収縮反応を減弱させることが明らかとなった。その機序として、インドキシル硫酸が AhR 非依存的に、NTPDase 活性を増大させることによりプリノセプターリガンドによる反応を減弱させたことが示唆された。