【背景・目的】
痒みの研究において、げっ歯類のひっかき行動の評価は欠かせないが、目視での観察は研究者への負担が大きく、自動検出手法の開発が必要である。近年、与えられたデータの特徴点を自動的に抽出できる、Deep Learningと呼ばれる機械学習手法が生物学の分野に応用されてきている。本研究は、Deep Learningを用いて、C57BLマウスのひっかき行動を自動検出できるシステムを開発することを目的とした。
【方法・結果】
C57BLにセロトニンを投与することで、ひっかき行動を誘発し、その行動を上部に固定したビデオカメラを用いて撮影した。約10分間の動画を計21本用意し、各動画をフレーム単位で「ひっかき行動」と「それ以外の行動」に分類した。21動画のうち12動画を用いて、黒マウスのひっかき行動の特徴をDeep Learningモデルに学習させた。つづいて、残りの9動画のうち4動画を用いて、マウスが「いつ、ひっかき行動をしているのか」を、特徴を学習させたモデルに予測させた。一部の動画で、ひっかき行動の誤判定が見受けられたため、それらを取り除くフィルターを定義し、精度の改善を試みた。最後に学習済みモデルとフィルターを用いて、残る5動画の評価を行ったところ、ひっかき行動を精度よく認識することができた。また、ひっかき回数、一回当たりの時間を、人の観察と同程度に予測できた。
【結論】
本研究によって、C57BLマウスのひっかき行動を自動評価するためのシステムが確立できた。