ラメルテオンはメラトニンMT1/MT2受容体作動薬で、睡眠覚醒サイクルを整える働きがあり、不眠症の治療に用いられている。ラメルテオンは皮質の脳波を変化させるという当研究室の研究結果から、ラメルテオンが脳内の情報処理に関わっていることが示唆された。我々はラメルテオンが記憶、学習といった認知機能に影響を与えているという仮説を立て、記憶の獲得、固定、想起のいずれをラメルテオンが変化させているのか調べた。ラメルテオンの記憶への影響を確認するために、生理食塩水あるいはラメルテオン(3.0mg/kg)をマウスに腹腔内に投与し、新奇物体認識試験を行った。新奇物体認識試験ではDay 1(トレーニング)で同じ物体を二つオープンアリーナに置きマウスに自由探索させ、Day 2(テスト)では片方の物体を別の物体へ変え自由探索させた。獲得、固定、想起のどの段階がラメルテオンに影響されるかを確かめるため、トレーニングの20分前(獲得群)、トレーニングの直後(固定群)、テストの20分前(想起群)のいずれかのタイミングで投与した。オープンアリーナを四分割し、テストのときのマウスの各エリア滞在時間を計測した。ラメルテオンを投与した獲得群のマウスの成績はコントロールよりも有意に高かったが、固定群、想起群ではコントロールと比較して有意な差は認められなかった。これらの結果からラメルテオンは記憶の獲得を促進することが示唆される。ラメルテオンが認知機能を促進させた仕組みを明らかにするため、現在免疫組織学的、電気生理学的な研究を行う予定である。