尿酸は受動的に細胞膜を透過できないため、尿酸の全身動態制御においては、トランスポーターによる尿酸輸送がきわめて重要な役割を果たしています。尿中への尿酸排泄については、糸球体濾過により原尿中に出された尿酸が再吸収・分泌を繰り返し、最終的に濾過された尿酸の約10%が尿中に排出されると考えられており、再吸収に関わる分子として、URAT1とGLUT9が同定されています。遺伝子変異によりこれらのトランスポーターの機能が低下している場合、尿酸の再吸収不全により血清尿酸値が低下し、腎性低尿酸血症となることが分かっています。
 一方、長らく不明であった尿酸分泌トランスポーターの実体として、発表者らの共同研究の結果、ABCG2が見出されました1)。また、ABCG2が腸管から糞中への尿酸排出を担い、ABCG2の機能低下が新たな病態分類である“腎外排泄低下型”高尿酸血症を引き起こすことが明らかになりました2)。さらに、ABCG2による尿酸輸送を強く阻害し、臨床濃度においてABCG2を介した尿酸排泄を阻害しうる尿酸降下薬の存在が示されました3)
 本講演においては、このようなトランスポーターによる尿酸動態制御と薬物療法について、最新の知見4,5)を交えてお話しする予定です。
参考文献:
1) Sci Transl Med. 2009 Nov 4;1(5):5ra11.
2) Nat Commun. 2012 Apr 3;3:764.
3) Front Pharmacol. 2016 Dec 27;7:518.
4) Ann Rheum Dis. 2020 Jan;79(1):164-166.
5) Proc Natl Acad Sci U S A. 2020 Aug 4;117(31):18175-18177.