2次性リンパ浮腫は、乳がんや子宮・卵巣がんといったリンパ節廓清をともなうがんの手術や放射線治療の合併症として続発的に発症する。この2次性リンパ浮腫は難治性の慢性疾患であり、患者のQOLを低下させる。一方、血小板凝集や血管平滑筋収縮作用があるトロンボキサンA2に、炎症組織においてリンパ管新生増強作用があることを我々は最近見いだした。そこで、トロンボキサンA2のリンパ浮腫における役割を明らかにすることを本研究の目的とし検討を行った。
 雌性C57BL/6マウス(野生型,WT)とトロンボキサンA2受容体欠損ノックアウトマウス(TPKO)を用い、マウスの尻尾皮膚全層を掻把して2次性リンパ浮腫モデルを作成し、尾部径、リンパ管新生およびその関連因子について比較検討した。またマクロファージ特異的TPKOマウスと対照マウスを用いて同様の検討を行った。
 その結果、術後6週間までの尾部径はWTよりもTPKOで増大し、術後3週目の新生リンパ管面積、リンパ管径、リンパ管新生関連因子の発現はWTに比べてTPKOで減少した。また炎症性マクロファージ関連マーカーはTPKO で増加し、修復性マクロファージ関連マーカーは減少した。培養マクロファージのリンパ管新生因子産生はTPKOで減少した。加えて、マクロファージ特異的TPKOマウスと対照マウスにおいても同様の結果が得られた。
 以上の結果から、マウス尾部浮腫モデルにおいて、内因性トロンボキサンはマクロファージのトロンボキサンA2受容体に作用し、リンパ管新生を促進させることでリンパ浮腫軽減に関与することが示唆された。