【はじめに】
様々な病態に関与するProstaglandin E2(PGE2) は、膜結合型プロスタグランジン合成酵素(mPGES-1)によって生合成される。我々はスポンジ移植モデルを用いてmPGES-1/PGE2の肉芽組織形成過程にRegulatory T cells (Tregs)の集積が関与することを報告した。損傷組織に集積するTregsは免疫寛容の他に、組織の細胞と相互作用して恒常性の維持や組織修復に寄与する報告がある。今回我々は損傷組織に集積するTregが創傷治癒及び肉芽組織形成に関与するのか、またそれがmPGES-1/PGE2に依存しているのかを検討することにした。 
【方法】
 6-8週の雄性の野生型(Wild type=WT)及びPGE2が産生されないmPGES-1欠損マウス(mPGES-1KO)でウレタン製滅菌スポンジ(厚さ5mm、直径13mm、重量8.1 ± 0.3mg)を背部皮下に移植することで肉芽組織形成モデルを作成した。移植後7、14日にスポンジを摘出し,スポンジ肉芽組織の湿重量の測定を行なった。またmRNAレベルのCD31、VEGF、Foxp3、TGF-βの発現をreal time PCRにて、さらに肉芽組織周囲のCD31、FOXp3、TGF-βの蛋白レベルの発現を免疫組織化学にて比較検討を行なった。肉芽形成におけるTregsの関与についてはCD25、FR4中和抗体を投与することで検討した。 
【結果】
スポンジ肉芽重量はWTと比較しmPGES-1KOで有意に低下を認めた(P<0.05)。またスポンジ肉芽組織のCD31、VEGF、FOXP3、TGF-βのmRNA発現はmPGES-1KOで有意に低下を認めた(P<0.05)。更にmPGES-1KOで免疫組織化学にてスポンジ肉芽組織周囲のCD31、FOXp3及びTGF-βの発現の低下を認めた(P<0.05)。WTでCD25中和抗体を投与するとスポンジ肉芽重量及びスポンジ肉芽組織周囲のFOXp3陽性細胞、TGF-βの発現は有意に低下を認めたがmPGES-1KOでは抑制は認められなかった。
【考察】
 以上の結果より創傷治癒の初期段階でのmPGES-1/PGE2 経路を介して、Tregsを創傷部位に集積しTGF-βを放出することで血管新生及び肉芽組織形成を促進するという機序が考えられた。今後Tregsによる細胞治療が新たな創傷治癒の治療のtoolとして期待が持てる。