マイクログリアは脳内で死細胞の貪食やサイトカイン放出などを行い脳内恒常性の維持に重要な役割を果たす。マイクログリアは脳全体に排他領域を保ちながら存在し周囲環境を監視するが、マイクログリアの密度やターンオーバーを制御し、機能的多様性を生み出すメカニズムは未解明である。
そこで本研究ではマイクログリアの分布及び密度に分裂や移動が関与する可能性を検証するために、脳切片培養系を利用してマイクログリアの動態をライブイメージングした。また分裂や移動を効率的に観察するためにクロドロン酸の投与によりマイクログリア選択的に細胞死を誘導し、残存したマイクログリアがリポピュレーションしてくる様子を観察した。
マイクログリア枯渇後6日目では増殖してきたマイクログリアが高密度に集合したコロニーが見られた。またその辺縁ではマイクログリア同士の接触により、接触面とは逆の方向にマイクログリアが押し出されるように移動する様子が観察された。
またコロニー内のマイクログリアは突起を長く伸ばした分枝状の形態をとっていたことから、分裂直後のマイクログリアは細胞全体でアクチンフィラメントの重合が促進され、マイクログリア同士の接触により局所的なアクチン-ミオシンの収縮・アクチンフィラメントの脱重合が起こることでマイクログリア間の距離を調節するような細胞移動が可能になる可能性がある。