【目的】持続的な高血圧は血管機能障害を引き起こし、大腿動脈においても種々の内因性物質による血管反応性の異常が認められる。ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)といったウリジンヌクレオチドは血管緊張調節を含む血管系のホメオスタシスに重要な役割を果たす内因性の細胞外核酸としても知られている。しかしながら、高血圧下におけるUDP、UTPによる大腿動脈における反応性に関しては不明であったため、spontaneously hypertensive rat (SHR)と対照WKYラットを用いて検討した。【方法】12ヶ月齢のSHR、WKYより大腿動脈を摘出、リング標本を作成しオルガンバス法により収縮反応を観察した。また、一酸化窒素合成酵素阻害薬存在下においても検討した。【結果・考察】大腿動脈においてWKY群と比較して、SHR群においてUDP及びUTPによる収縮反応の増大が認められた。一酸化窒素は、血管弛緩物質として知られ、高血圧病態において、そのバイオアベイラビリティーが低下し血管機能障害に関与することが知られている。そこで、一酸化窒素合成酵素阻害薬存在下においても検討したところ、非存在下と同様、WKY群と比較して、SHR群においてUDP及びUTPによる収縮反応の増大が認められた。高カリウムによる収縮反応は、SHR群、WKY群で差が認められなかった。これらの結果から、持続的な高血圧は、UDP、UTPによる収縮反応を増大させることが明らかとなった、この増大は、平滑筋におけるカルシウム流入の増大や、一酸化窒素による収縮への寄与の違いによるものではないことが明らかとなった。