【目的】高反応性のジカルボニル化合物であるメチルグリオキサール (MGO) は、生体内で様々な悪影響を及ぼす。また、ウリジン二リン酸 (UDP) は、細胞外核酸として血管緊張調節物質としての役割を果たす。MGOは、血管機能に影響を及ぼすことが明らかとなりつつあるが、UDP誘発血管反応への影響は不明である。我々は、ラット頸動脈にて、UDPは収縮反応を誘発することを明らかとしているため、今回、MGO急性暴露によるUDP誘発収縮反応への影響を検討した。さらに、その機序について検討した。【方法】雄性 Wistarラットの頸動脈リング標本における血管反応を検討した。MGO (1 hr) 処置/非処置標本に対し、UDPによる収縮反応検討した。また、一酸化窒素合成酵素阻害薬存在下、UDP誘発収縮反応におけるp38 MAPK阻害薬、protein kinase C (PKC)阻害薬の影響について検討した。また、N-acetyl-L-cysteine (NAC) 処置下におけるMGOのUDP収縮に対する影響について検討した。さらに、p38 MAPKのリン酸化量についてウエスタンブロット法にて検討した。【結果・考察】ラット頸動脈において、UDP誘発収縮はMGO処置により増大したが、セロトニンや高カリウムによる収縮はMGOで影響が認められなかった。また、p38 MAPK 阻害薬処置でUDP誘発収縮の抑制が両群で認められ、p38 MAPK阻害薬存在下では、control群、MGO処置群における収縮反応の差が消失した。また、p38 MAPKのリン酸化量は、UDP刺激下、非刺激下にて、MGO処置によりいずれも増加した。さらに、PKC阻害薬処置によりMGO処置群のみ、UDP誘発収縮が抑制した。NACを処置することで、MGOによるUDP収縮増強が部分的に抑制された。これらの結果から、頸動脈でのMGOによるUDP誘発収縮の増強には、p38 MAPKの活性化、PKC経路の特異的増強、酸化ストレス増大が関与することが示唆された。