【目的】当研究室では天然物ウコンに含まれるcurcuminが心不全の進展を抑制することを見出した。しかし、curcuminは吸収性効率が悪いため、新たに非晶質形態の新規クルクミン製剤であるcurcuRougeTMを開発した。本研究ではcurcuRougeTMと既存の高吸収クルクミン製剤であるTheracurminの心筋梗塞に対する効果を比較、検討した。
【方法】SDラットに心筋梗塞 (MI) 手術を施し、curcuRougeTM (0.2 mg/kg curcumin) またはTheracurmin(0.2 または 0.5 mg/kg curcumin)を術後1週目から、6週間連日経口投与し、心エコーを行った。その後、心臓の輪切り切片にヘマトキシリン・エオジン (HE) 染色及びピクロシリウスレッド (PSR) 染色を行った。さらに、肥大反応遺伝子(ANF、BNP)、及び線維化誘導遺伝子(α-SMA)の mRNA レベルの定量化をqPCRにて、ヒストン H3K9 のアセチル化レベルをウエスタンブロット法にて検出した。
【結果】心エコーの結果、MI手術により低下した心機能は、0.2 mg/kg curcuRougeTMと0.5 mg/kg Theracurmin投与で有意に同程度改善したが、0.2 mg/kg Theracurminでは有意な改善がみられなかった。0.2 mg/kg curcuRougeTMと0.5 mg/kg Theracurmin投与群はMI手術により増加した個々の心筋細胞径、血管周囲の線維化、ANF・BNP、α-SMAのmRNAレベル、ヒストンH3K9のアセチル化を有意に減少させたが、0.2 mg/kg Theracurmin群では改善が認められなかった。curcuRougeTMによる副作用などは観察されなかった。
【考察】新規クルクミン製剤であるcurcuRougeTMは、Theracurminより低用量でも同等の心不全進展抑制作用を発揮することが示された。今後curcuRougeTMを用いた臨床試験を行うことで、様々な疾患の予防・治療につながることが期待される。