【目的】呼吸器系の基礎疾患を有する患者において、細菌やウィルス感染による急性増悪に伴うステロイド抗炎症薬に対する感受性の低下は、症状の制御を困難にする。したがって、ステロイド抗炎症薬とは異なる作用機序で症候を制御する治療薬の開発が求められている。近年、呼吸器疾患の病態形成の一部に血液凝固・線溶系が関与しており、トロンビンの受容体であるprotease-activated receptor (PAR)を介したシグナル経路が重要な役割を果たしていることが報告されている。そこで本研究では、マウスにおけるLPS誘発ステロイド治療抵抗性気道炎症に対するPAR拮抗薬の効果について検討した。
【方法】雄性A/Jマウスに、LPSを1日2回3日間経鼻曝露させ、薬物をLPS曝露2時間前に経鼻投与した。薬物投与終了翌日、気管支肺胞洗浄液 (BALF)を採取した。BALF中における全細胞数を計測後、flow cytometryにより好中球数を測定した。また、BALF中におけるCXCL1、osteopontin (OPN)及びIFN-γ量はELISA法により測定した。
【結果及び考察】LPS曝露マウスにおいて増加したBALF中の好中球数は、PAR拮抗薬であるSCH79797及びFSLLRY-NH2によって有意に抑制された。また、BALF中のCXCL1、OPN及びIFN-γ量の上昇においても、同様の効果が観察された。以上の結果から、慢性呼吸器疾患におけるステロイド治療抵抗性気道炎症の誘発において、トロンビン/PAR経路が一部関与していることが示唆された。