【目的】コリアンダー(パクチー:Coriandrum sativum)は、伝統的に香辛料や薬用植物として用いられており、解毒作用や抗酸化作用、抗炎症作用などを有することが報告されている。パクチーの抗酸化作用は、老化及び生活習慣病の他にも、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患への保護作用も期待されている。我々はSAMP8マウスを用いた研究により、パクチーが記憶障害に対し効果を示すことを明らかとした(Nutrients 2020,12,455)。そこで今研究ではラット副腎髄質褐色細胞腫由来PC12細胞を用いて、過酸化水素(H2O2)の酸化ストレスによる神経突起伸長抑制に対するパクチーの作用について検討を行った。
【方法】細胞培養プレートに播種したPC12細胞(1.2×104個/1well)を10%FBS含有D-MEM培地で培養した。播種から1日後、神経成長因子(Nerve Growth Factor : NGF 25ng/mL)を添加した。それと同時に、H2O2単独添加とH2O2及びパクチーの葉抽出物(CSLE)、パクチーの果実抽出物(CSSE)またはアスコルビン酸(AA)の同時添加を行った。CSLE及びCSSEの濃度は0.01μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mL、10μg/mLの4種類に分けて添加を行なった。薬剤添加から3日後にカメラ付き位相差倒立顕微鏡で1wellにつき2視野の画像を撮影し、形態計測分析を行なった。薬剤添加3日後の細胞からRNA抽出を行い、リアルタイムRT-PCR法を用いて、ニューロフィラメント(NF-L)及びカスパーゼ-3(caspase-3)の遺伝子発現レベルを解析した。なお、内部標準遺伝子としてグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)を用いた。
【結果・考察】H2O2添加によりPC12細胞の神経突起伸長作用は有意に抑制された。また、その抑制作用はCSLE、CSSEともに0.01μg/mLと0.1μg/mLによって改善され、0.1μg/mLによる改善効果はAA50μg/mLによる効果と同等レベルであることが明らかとなった。CSLE、CSSE 1μg/mLと10μg/mLでは改善が見られなかったことからパクチーによる抗酸化作用は0.1μg/mLが最適な濃度であると考えられた。リアルタイムRT-PCR法の結果、NF-Lの遺伝子発現レベルにおいてH2O2により有意な抑制が認められ、CSLE及びCSSEがその作用を改善した。以上の結果から、パクチーは、H2O2によるPC12細胞の神経突起抑制作用を改善することが考えられた。