【目的】ラクトフェリン(LF)は母乳に含まれるタンパク質であり、免疫機能の改善や骨代謝への作用が報告されている。また、中枢神経系への作用も報告されており、我々は卵巣摘出モデルラットを用いた自発運動量の低下を改善することを報告した(Current Molecular Pharmacology, 2021,14,245-252)。しかしながら、その作用機序は明らかとなっていない。ここで、LFが骨芽細胞様細胞においてERK経路を介し細胞増殖を促進することが報告されている。そこで今研究ではラット副腎髄質由来PC12細胞の神経突起伸長作用を用いLFのERK経路の関与について検討を行った。また、転写因子であるCREBへの関与についても検討を行った。
【方法】ラット副腎髄質由来PC12細胞を12well組織培養プレートに播種(1.2×104個/1 well)し、1日経過後LF単独添加およびLF(250μg/mL)とERK阻害剤であるPD98059(10-5M)、LFとCREB阻害剤であるKG-501(5.0×10-6M)の同時添加を行った。薬剤添加1日後と3日後にカメラ付き位相差倒立顕微鏡で撮影した細胞のデジタル画像を用いて、神経細胞伸展定量ソフト(KURABO)で形態計測分析(Joint、Pass、Length)を実施し、PC12細胞におけるLFの神経突起伸長作用を検討した。またPC12細胞を6well組織培養プレートに播種(3.0×105個/1well)し、播種から1日経過後、LF単独添加およびPD98059、KG-501の各種阻害剤の同時添加を行い、1日間及び3日間培養しリアルタイムRT-PCRによりニューロフィラメント(NF-L)の遺伝子発現レベルについて解析を行った。
【結果・結論】LFの添加により、PC12細胞は神経突起伸長作用を示すことが明らかとなった。また、PD98059との同時添加によりその効果は消失し、LFによるPC12細胞の神経突起伸長作用にERKの経路が関与していることが考えられた。また、KG-501の同時添加によっても同様の効果が認められ転写因子CREBの関与が考えられた。また、リアルタイムRT-PCR法の結果、NF-Lの遺伝子発現レベルがLFにより有意に上昇し、それら阻害剤の添加によりその上昇作用が抑制された。以上の結果よりLFはERK/CREB経路を活性化することによりNF-Lの発現量増加し神経突起伸長を促進することが示唆された。