【目的】
中脳辺縁系dopamine(DA)神経の主たる投射領域の側坐核には,GABA神経が分布している。我々はこれまで側坐核のδまたはμ受容体刺激誘発性のDA放出の促進には,同部位のGABA神経活動の抑制が関与する可能性を指摘している(Saigusa et al., Pharmacol. Rep., in press)。一方,細胞外液に含まれているGABAは,細胞膜上のGABAトランスポーター(GAT)を介して細胞内に取り込まれる。脳内のGATサブタイプのうち,GAT1は神経細胞,GAT3はグリア細胞にそれぞれ発現することが知られており,側坐核にはGAT1とGAT3がいずれも認められる。しかし,これらのGATの側坐核の細胞外GABA量の制御への関与の詳細は明らかでない。そこで本研究では,無麻酔非拘束ラットを用いたin vivo脳微小透析法により検出した側坐核のGABA量に選択的GAT1またはGAT3阻害薬が及ぼす効果を指標とし,GAT1とGAT3が側坐核の細胞外GABA量の調節で果たす役割について検討した。GABAの前駆物質で側坐核の細胞外液に含まれるグルタミン酸(Glu)量へ各薬物処置が及ぼす影響も比較のため観察した。
【方法】
実験にはS-D系雄性ラット(体重約200 g)を用いた。全身麻酔下で微小透析プローブ装着用のガイドカニューレの植立手術を行ったのち約1週間の回復期をおき,無麻酔非拘束の条件下でin vivo脳微小透析実験を行った。側坐核に留置した微小透析プローブにインフュージョンポンプで改良リンゲル液を2 μl/minで灌流し,同部位の細胞外液を試料として20分毎に回収した。試料中のGABAとGlu量はHPLCシステムで分離し蛍光検出器で定量した。使用薬物は灌流液に溶解し,微小透析プローブから逆透析で側坐核に60分間にわたり灌流投与した。GAT阻害薬の投与量は灌流液中の総量(mol)で示した。
【結果】
試料中のGABA量は,選択的GAT1阻害薬のNNC711(600, 6000 pmol)により最大約220%まで用量依存的に増大したが,選択的GAT3阻害薬の(S)-SNAP-5114(12, 120 nmol)では目立った変化がなかった。一方,NNC711,(S)-SNAP-5114は試料中のGlu量に著しい影響は及ぼさなかった。
【考察】
以上の結果から側坐核の細胞外GABA量は,GAT3ではなくGAT1の阻害で増大することが示された。また,側坐核のGABAの細胞内への取り込みにはGAT1が関与するが,GAT3は目立った役割を果たさない可能性が示唆された。さらにGAT1またはGAT3の阻害は,側坐核の細胞外Glu量には殆ど影響がないことが考えられた。