【背景・目的】気管支喘息の治療には,吸入ステロイド薬が広く病態の管理に使用されている.ステロイド薬は,その強力な抗炎症作用から喘息の治療満足度の向上に大きく貢献したが,本薬物が奏功しない重篤な患者のケアや,粘液の過剰産生など,ステロイド薬の効果が不十分な症状への対応には課題が残っている.一方,炎症性サイトカインのIL-17AおよびIL-17Fは臨床において気管支喘息の重症度との相関が示唆されている.当研究室でも,チリダニ抽出物(HDM)を抗原とした気管支喘息マウスで,IL-17Aの高発現とステロイド薬が奏功しない気道粘液の産生亢進が生じることを見出している.そこで本研究では,気管支喘息の病態形成およびステロイド感受性の両面でのIL-17AおよびIL-17Fの役割を,欠損マウスを用いて調べた.
【方法】野生型(WT),IL-17A欠損,IL-17AおよびFの両欠損の雄性BALB/cAマウス(6-8週齢)の気管内にHDM 20 µgを頻回投与して気管支喘息を誘発した.また,ステロイド薬dexamethasone (DEX : 1 mg/kg, i.p.) をHDM投与の前日および当日に投与した.
【結果・考察】IL-17A欠損あるいはIL-17AおよびFの両欠損マウスにHDMを投与した群では,WTと比較してBALF中の炎症細胞数に有意な変化はなかったが,methacholine感受性で評価した気道過敏性および気道粘液の主成分であるMUC5ACのmRNA発現はむしろ亢進する傾向にあった.また,WTではBALF中の炎症細胞数および気道過敏性の亢進はDEXによって著明に抑制されたのに対し,MUC5ACのmRNA発現には影響がなく,本モデルでの気道粘液の産生はステロイド抵抗性であった.一方,IL-17A欠損あるいはIL-17A,Fの両欠損マウスでは,DEXは炎症,気道過敏性に加えてMUC5ACのmRNA発現を有意に抑制した.さらに健常マウスの気道内にIL-17Aおよび IL-13を投与して誘発したMUC5ACの発現亢進もDEXで抑制されなかった.以上の成績から,IL-17Aが気管支喘息罹患時に生じるステロイド抵抗性の粘液産生に少なくとも一部関わると推定された.その詳細な機序は未だ不明だが,これらは難治性の喘息治療を考える上で興味深い基礎データである.

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