【背景・目的】Aquaporin 5 (AQP5) は主に外分泌組織での水分泌に関わる水チャネルであり,その機能異常はシェーグレン症候群などに随伴する乾燥症状と密接な関係にある.AQP類は開閉しない孔状の膜タンパク質であり,腺細胞でのAQP5はアセチルコリン刺激等によって速やかに細胞内から細胞膜へと移動して水分泌を効率化させると推定されているが,その詳細な調節メカニズムは不明である.一方,ezrinは,細胞骨格と細胞膜を架橋するERMタンパク質類の1つであり,種々の膜タンパク質の細胞膜局在に関わる.そこで本研究では,AQP5の細胞膜局在に対するezrinの役割を調べた.
【方法】内因性のAQP5を発現するマウス肺上皮細胞株MLE-12細胞を実験標本とし,HAタグを付加した野生型あるいはC末端領域のactin binding domainを大きく欠失させたdominant negative (DN) ezrin発現plasmidを遺伝子導入した.AQP5の細胞膜局在は蛍光免疫染色法または細胞表面のタンパク質をbiotin化,回収してwestern blot法で調べた.
【結果・考察】野生型およびDN ezrinを遺伝子導入した細胞で,無刺激状態でのAQP5細胞内局在に影響は認められず,細胞膜表面のAQP5量にも著明な差はなかった.一方で,細胞をionomycin (1 μM, 15 分) 処理すると細胞膜表面のAQP5が増加し,細胞内から細胞膜への移行が促進されたが,DN ezrinを導入した細胞ではこのionomycinによる膜移行が著明に抑制された.また,ezrin阻害薬であるNSC305787 (10 μM) の共処理,ezrinと相互作用するアクチン繊維および微小管の阻害薬cytochalasin D (20 μM) あるいはvincristine (10 μM) の前処理 (2 時間) でも,ionomycinによる膜移行が抑制された.これらの結果から,ezrinは刺激によって促進されるAQP5の細胞内貯蔵部位から細胞膜への移行に選択的に関わること,またこれにはezrinと細胞骨格タンパク質との相互作用が重要であると推定された.本成績は,AQP5細胞膜移行の機序が刺激の有無によって異なることを示唆しており,外分泌機能異常を呈する疾患の病態生理や治療を考える上で興味深い知見である.

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