【背景・目的】肥満細胞がIgE抗体を介して抗原を認識し、活性化することで起こるアレルギー反応は、本来ハチ毒やヘビ毒などの動物毒に対する生体防御反応とされている。脂質メディエーターの1つであるプロスタグランジンD2(PGD2)は受容体CRTH2を介して、多様なアレルギー反応を促進する働きがあると報告されている。しかし、動物毒に対する生体防御反応において果たす役割は不明である。本研究は、CRTH2シグナルがハチ毒に対する生体防御反応において果たす役割を解明することを目的とした。
【方法・結果】野生型マウス(WT)に、ハチ毒を皮下投与した30分後に皮膚を採材し、質量分析装置にてPGD2量を測定するとハチ毒を投与しなかった時に比べて有意に検出量が増加した。また、CRTH2遺伝子欠損マウス(Crth2-/-)においてもWTと同程度にPGD2が検出された。WTにハチ毒640 mgを投与すると、約5時間後に体温が約10℃低下し、腎障害が生じた。Crth2-/-においてもWTと同程度の体温低下と腎障害が観察された。WTに80 mgのハチ毒を前投与(感作)した後、再びハチ毒640 mgを投与すると、感作せずにハチ毒640 mgを投与した時と比較して、体温低下が有意に抑制され、腎障害が低減された。一方同様のハチ毒投与を行ったCrth2-/-では、感作による体温低下の抑制が観察されなかった。次にCRTH2を介してハチ毒に対する生体防御反応が成立する機構を解明するため、この反応が成立するのに必須なIgE産生に着目した。ハチ毒を投与したマウスから採血した血清中に含まれるハチ毒特異的なIgE値をELISAにて測定したところ、投与前に比べてWTではIgE値が上昇したが、Crth2-/-ではこの上昇の程度が有意に小さかった。樹状細胞は、生体に侵入した抗原を捕捉して活性化し、抗原提示能を有して所属リンパ節内に遊走することでIgE産生を促進する。ハチ毒を投与した24時間後の所属リンパ節内において、活性化樹状細胞の数が、WTと比較してCrth2-/-で有意に少なかった。
【結論】PGD2/CRTH2シグナルはハチ毒特異的なIgE産生を促進することで、ハチ毒に対する生体防御反応を成立させていることが示された。またそのメカニズムとして、活性化樹状細胞のリンパ節遊走を促進している可能性が示された。

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