【背景・目的】子宮内膜間質細胞(ESC)は、月経周期の分泌期において主に黄体から分泌されるプロゲステロン(P4)の作用により脱落膜細胞へと分化(脱落膜化)し、胞胚の着床準備を整える。この過程では、意義については不明であるが、老化様細胞が出現し、炎症性サイトカインなどを分泌する老化随伴分泌現象(SASP)が起こる。フォークヘッド型転写因子FOXO1は、脱落膜化を誘導するとともに、細胞老化にも関与することが報告されている。我々は、典型的なP4受容体とは異なるP4受容体膜構成因子1(PGRMC1)の発現が脱落膜化と共に減少し、この発現低下が脱落膜細胞への分化を促進することを明らかにした。しかしながら、脱落膜化過程でのPGRMC1発現低下と細胞老化との関係は不明である。本研究では、脱落膜化に伴う細胞老化におけるPGRMC1の役割を検討した。
【方法】初代培養ESCにPGRMC1阻害薬(AG205)又はPGRMC1 siRNA を処置した後、脱落膜化刺激(P4とcAMP誘導体(db-cAMP))を加えて2日間培養した。細胞老化に対するPGRMC1機能阻害の効果について老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)活性及びSASP因子発現を指標に調べた。また、脱落膜化刺激により誘導されるFOXO1および着床関連因子シクロキシゲナーゼ2(COX2)発現に対するPGRMC1機能阻害の効果、さらに細胞老化に対するFOXO1ノックダウンの効果について検討した。
【結果】AG205 及びPGRMC1 siRNA 処置によるPGRMC1機能阻害は、脱落膜化を促進すると共にSA-β-Gal活性を増加させ、IL-8などのSASP因子の発現を変動させた。また、PGRMC1機能阻害は、脱落膜化刺激によるFOXO1発現をさらに増加させると共にCOX2発現も増加させた。FOXO1ノックダウンは、この脱落膜化刺激によるSA-β-Gal活性およびCOX2発現の上昇を抑制した。
【考察】脱落膜化過程で起こるPGRMC1発現の減少は、FOXO1発現の増加を介して脱落膜化と細胞老化を誘導すること、さらに、分化過程で起こるCOX2発現の誘導にも寄与することが示唆された。