【背景と目的】HCNチャネル阻害薬ivabradineは洞房結節に作用し、徐拍化を目的として慢性心不全を対象に臨床使用されている。一方で、ivabradineを処方された患者の中に致死性不整脈に関する有害事象が報告されており、in vitro研究では同薬のhERG K+電流抑制作用が報告されているものの、有害事象との因果関係は明らかにされていない。本研究ではivabradineの心室作用の評価を通じて有害事象との因果関係を明確にするため、ivabradineの催不整脈作用および心房と心室の自動能に対する抑制作用を催不整脈モデルである急性房室ブロックウサギを用いて同時評価した。
【方法】Isofluraneで麻酔したNZWウサギ(n=5)にカテーテル焼灼法を適用し完全房室ブロックを作成した。心室補充調律が安定して出現した状態で体表面心電図および右心室の単相性活動電位(MAP)を記録し、ivabradine(0.01、0.1、1 mg/kg)を累積的に30分間隔で静脈内投与した。Ivabradine投与前後における心房拍動数(AR)と心室拍動数(VR)の変化、MAP持続時間(MAP90)の変化、およびR on T型心室期外収縮(PVC)とtorsade de pointes(TdP)の発生を観察した。
【結果】房室ブロック作成後のAR、VRおよびMAP90はそれぞれ305±9 bpm、96±8 bpmおよび179±32 msであった。Ivabradineの0.01 mg/kgは心電図に影響を与えなかったが、臨床用量に相当する0.1 mg/kgはARとVRを低下させ、それぞれの変化量は−8±12 bpmと−13±9 bpmであった。このとき、MAP90は25±7 ms延長し、R on T型PVCおよびTdPの発生が5例中1例に認められた。1 mg/kgはARとVRをさらに低下させ、それぞれの変化量は−61±14 bpmと−45±17 bpmであった。このとき、MAP90は77±42 ms延長し、R on T型PVCおよびTdPの発生が5例中2例に認められた。
【結論】Ivabradineは心房調律を抑制する用量で心室自動能を低下させ、同時に再分極過程の遅延ならびに催不整脈作用を示す薬物であることが明らかとなった。この催不整脈作用は臨床相当用量で出現したことから、同薬服用中の患者に認められた有害事象の原因を分析する上で有用な情報になると考えられる。

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