【目的】心電図QT間隔延長を伴う薬剤誘発性の不整脈は薬物クラスによらず発症するため予測が難しく、QT延長毒性として、医薬品開発における安全性試験の対象となっている。このQT延長毒性には性差があり、我々は性ホルモンが関与する分子機構を報告してきた。一部のエストロゲンが関わる機構として、エストロゲンが有する芳香環がhERGチャネルの薬物結合部位に相互作用し、選択的hERG阻害剤E-4031の反応を増大することを見出した。2019年のJAMAでは、健常女性において、経口避妊薬の併用によりⅢ群抗不整脈薬ソタロールによるQT延長リスクが増大することが報告されたことから、エストロゲンに類似した構造を有する物質がhERG阻害に影響する可能性が示唆された。そこで、本研究ではエストロゲン様化合物とhERG阻害薬の相互作用のメカニズムを探索するために、内因性エストロゲンもしくは合成エストロゲン存在下および非存在下にて代表的なhERG阻害薬の作用を比較解析した。
【方法】標本はhERGチャネルを安定発現させたHEK細胞もしくは一過性にhERGチャネルを発現させたCHO-K1細胞を、ステロイドを除去した条件で培養し、マニュアルパッチクランプ法もしくはオートパッチクランプ装置SyncroPatch384i(ナニオン)を用いて、室温にてhERG電流を測定した。エストロゲン及びhERG阻害薬は細胞外から投与した。
【結果&考察】hERG電流に対し、EE2単独での作用は見られなかったが、EE2は選択的hERG阻害薬E-4031によるhERG電流阻害作用を部分的に回復した。一方、キニジンによる阻害の場合は、EE2により阻害作用が増強した。以上より、EE2はhERG阻害薬それぞれに対しそのQT延長リスクを減弱もしくは増強する、両方向性の作用を示した。
SyncroPatch384iを用い、さらに多くの阻害薬との相互作用を検討したところIC50値の増減はエストロゲンと阻害薬の組み合わせごとに様々であることが分かった。今後、エストロゲンがhERG阻害による薬物の心毒性に与える影響を予測することを目指し、以上の結果をもとに構造活性相関を解明したい

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