【目的】虚血性心疾患や高血圧性心疾患をはじめとするあらゆる心疾患は最終的に心機能の低下した心不全へと至る。これまでの研究において、心肥大時にヒストンアセチル化酵素 (HAT) 活性を有する核内転写コアクチベータのp300がヒストンH3K9をアセチル化し、左室リモデリングを増悪させることを見出した。さらにHAT活性を欠損させたp300を心臓特異的にマウスに過剰発現させると心筋梗塞後の左室リモデリングの進行が抑制されたことより、p300-HAT活性は心不全治療のターゲットとなると考えられる。本研究では心筋細胞肥大を指標に天然抽出物ライブラリーからスクリーニングを行い、オオイタドリ若芽抽出物に着目し、心不全に対する直接的な効果を初代培養心筋細胞および心筋梗塞ラットモデルを用いて検討した。
【方法・結果】初代培養心筋細胞にオオイタドリ若芽抽出物を処理後、フェニレフリン (PE) で刺激し心筋細胞肥大を誘導した。PE刺激によって亢進した心筋細胞面積、心肥大反応遺伝子であるAtrial natriuretic factor (ANF), Brain natriuretic peptide (BNP) の転写活性、ヒストンH3K9のアセチル化はオオイタドリ若芽抽出物処理により抑制された。次にin vitro p300-HAT assayを行った結果、オオイタドリ若芽抽出物はp300のHAT活性を直接阻害していることが示唆された。心不全モデル動物におけるオオイタドリ若芽抽出物の効果を検討するため、7~8週齢の雄性SDラットに左前下行枝血管を結紮する心筋梗塞 (MI) 手術を施し、MIモデルラットを作成した。左室内径短縮率 (FS) が40%以下のラットをランダムに群分けし、Vehicle(1%アカシアガム)、オオイタドリ若芽抽出物 (0.3 g/kg,、1 g/kg) を術後1週間後から8週間連日経口投与した。術後9週間における心臓超音波検査の結果、1 g/kgオオイタドリ若芽抽出物投与群ではMI手術によるFSの低下と左室後壁厚の肥厚を有意に改善した。さらに心臓の組織学的解析を行った結果、MIにより増加した個々の心筋細胞の肥大や細胞間質の線維化をオオイタドリ若芽抽出物は有意に抑制した。またMI手術によって亢進した心肥大反応遺伝子および線維化遺伝子の転写活性、ヒストンH3K9のアセチル化も1 g/kgオオイタドリ若芽抽出物は有意に抑制した。
【考察】オオイタドリ若芽抽出物は心筋細胞核内に存在するp300のHAT活性を直接阻害することで、心筋細胞肥大および心筋梗塞後心不全の増悪を抑制することが示唆された。今後さらなる検討を進めることでオオイタドリ若芽抽出物が新規心不全予防薬・治療薬に繋がることが期待される。

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