[目的]パーキンソン病(PD)患者は運動障害発症前から多彩な非運動障害を高頻度に発症する。特に感覚・認知障害は病初期から発症し、PDの進行に伴い憎悪することが知られている。しかしながら、それら前駆症状の病態には不明な点が多く、その解明には適切なモデル動物を用いた研究が必要である。農薬のロテノンを動物に投与すると、ヒトPDと類似の病態を示すが、その信憑性には未だ疑問の余地がある。そこで、本研究では、ロテノン投与マウスにおける感覚・認知を運動機能障害と併せて評価し、その有用性を検討する。
[方法]マウス(雄,C57BL/6J,20-25週齢)の右側鼻腔内にロテノン(0.35 mg/kg)もしくは溶媒(対照群)を1日1回1週間(1w-R)、もしくは、4週間(4w-R)に亘り反復投与してモデル動物を作成した。1w-Rにおいて、ロテノン投与終了後8日目から主に感覚・認知機能を、下記の方法で評価した。嗅覚機能:Y字迷路を用い、初日に蒸留水を用いて運動機能を確認し、翌日に酪酸忌避行動を評価。味覚機能:23時間断水後、10秒間短時間暴露法で苦味忌避を、3日間、濃度を変えて繰り返し評価。また、非断水下で2瓶法による長時間(24時間)味覚嗜好性を、6日間濃度を変えて評価。認知機能:味覚嫌悪条件付け(CTA)および恐怖文脈条件付け(FC)を用いて、条件付け記憶の想起/消去を3-6日間評価。運動機能:ロータロッドを用いて四肢協調運動を評価。また、4w-Rでは、ロテノン投与開始8日後から1週間毎にロータロッド用いた運動機能評価を5週に亘って行った。
[結果と考察]1w-Rでは、対照と比べて酪酸に対する忌避行動が有意に減弱し、苦味感受性も有意に低下した。また、CTA直後の味覚嫌悪は両群で同程度であったが、その記憶の消去が1w-Rで有意に短縮した。一方、FC直後の強い恐怖が1w-Rで有意に減弱したが、その記憶の消去は両群で同程度であった。しかしながら、運動機能には異常は認められなかった。一方、4w-Rでは投与2週目からロッドからの落下までに要する時間が有意に短縮し、投与1週目(或いは1w-R)では認められなかった運動障害が出現し、観察期間を通じて維持された。これらの結果から、1w-Rマウスは、PDの前駆症状を示すモデルマウスとしてPDに関連した非運動障害の病態解明に有用である可能性が示唆された。

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