【背景】交通事故や転倒などによる頭部外傷は、脳内のバリア機能を担うBlood-brain barrier (BBB)を破綻させることによって脳組織に致命的なダメージをもたらす。本研究では、脳血管障害を抑制する因子として知られているSonic hedgehog (SHH)に注目し、頭部外傷モデルマウスにおけるSHHの発現変化およびBBBの破綻に対する作用を検討した。
【方法】Fluid percussion装置により発生させる水圧によって麻酔下のマウス(雄性ddY, 6-7 週齢)にFluid percussion injury (FPI) による頭部外傷を与えた。BBBの破綻はマウスの尾静脈より投与したEvans blueの脳組織への漏出により評価した。脳組織のSHH発現はReal-time PCR法、Enzyme immunoassay法および蛍光免疫組織染色により確認した。SHHの作用に関わる膜タンパク質であるpatched-1 (PTCH-1)およびsmoothened (SMO)の発現はウエスタンブロット法および蛍光免疫染色法により確認した。Recombinant SHH(1 mg/日)はFPIの2から5日後にかけてマウスの側脳室内へ反復投与し、SHH阻害薬Jervine (50 nmol/日)はFPIの2から7日後にかけて投与した。
【結果・考察】FPIを与えたマウスの脳では2から5日後にかけてBBBの破綻が顕著にみられたが、7日後以降はBBBの破綻が抑制されていた。 SHHの発現はFPI後に増加し、特にBBB破綻の抑制がみられたFPIの7日後で顕著に増加した。また、FPI後の脳組織ではPTCH-1とSMOの発現も増加していた。脳組織におけるSHH、PTCH-1およびSMOの発現細胞を確認したところ、SHHは主にアストロサイトで発現が観察され、PTCH-1とSMOは血管内皮細胞で発現が観察された。Recombinant SHHを投与したマウス脳では、FPIによるBBBの破綻が抑制され、Jervineを投与するとBBBの破綻が悪化していた。これらの結果より、SHHは頭部外傷によるBBBの破綻を抑制できることが示され、頭部外傷に対する新たな治療薬の候補となりうることが期待される。