【目的】緑内障の患者において認められる網膜神経節細胞(RGC)傷害には、神経興奮毒性が関与している可能性が考えられている。また、網膜色素変性の患者において認められる視細胞の進行性の変性には、小胞体ストレスが関与している可能性が考えられている。アセトアミノフェンの代謝産物であるAM404は、脳虚血再灌流傷害に対する保護作用を示すことが報告されている。AM404は、内因性カンナビノイドであるアナンダミドを輸送するトランスポーターを抑制する作用やTRPV1受容体を刺激する作用を示すことが報告されている。本研究では、マウスにおいて、神経興奮毒性を惹起するNMDAおよび小胞体ストレスを惹起するツニカマイシンにより誘発される網膜傷害に対するAM404の保護作用を検討した。
【方法】①NMDA誘発網膜傷害:RGCにECFPを発現させたトランスジェニックマウスをケタミン(90 mg/kg)・キシラジン(10 mg/kg)混液の腹腔内投与により麻酔した。NMDA(40 nmol/eye)とAM404(3 nmol/eye)の混液を作製し、硝子体内投与した。硝子体内投与7日後に眼球を摘出し、網膜伸展標本を作製した。共焦点レーザー顕微鏡で観察し、視神経乳頭に近接する0.2 mm 2 に存在するRGC数を測定した。
②ツニカマイシン誘発網膜傷害:ICR系雄性マウスをケタミン・キシラジン混液の腹腔内投与により麻酔した。ツニカマイシン(60 ng/eye)とAM404(0.3 nmol/eye)の混液を作製し、硝子体内投与した。眼球を固定後、パラフィン包埋して視神経乳頭を通る厚さ4 μmの水平切片を作成し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。視神経の中心から500 μm離れた位置において長さ50 µmの領域に含まれる視細胞核の総数を計数した。
【結果】NMDAにより誘発される網膜神経節細胞の脱落、およびツニカマイシンにより誘発される視細胞核の脱落は、AM404の同時投与により有意に抑制された。
【考察】AM404は、マウス網膜におけるグルタミン酸興奮毒性によるRGCの脱落や小胞体ストレスによる視細胞の脱落を抑制することが示された。AM404の神経保護作用にカンナビノイド受容体あるいはTRPV1受容体の活性化が関与しているのかどうかは、今後の検討課題である。

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