Alexander disease (AxD)は,アストロサイトの中間径フィラメントであるglial fibrillary acidic protein (GFAP)遺伝子の変異で生じる一次性アストロサイト病で、非常に希少な神経変性疾患である.AxDでは大脳白質病変およびRosenthal Fiber (RF)と呼ばれるGFAPを主な構成成分とする異常な凝集体が特徴的な組織病変として存在する.これら組織学的特徴に加えて,AxDはミクログリアの活性化を伴う神経炎症を示すことが明らかになっている.しかしミクログリア活性化の炎症状態および病態への関与は一様ではなく,疾患や環境に応じて様々に変化することから,ミクログリアがAxDの病態に対してどのように関与しているかは明らかではなかった.そこで我々は, AxDにおけるミクログリアの役割を明らかにすることで,いまだ十分な治療法の存在しないAxDに対する新たな治療法の確立に寄与することを目的として本研究を行った.我々はすでに、R239Hの変異が入ったヒトGFAP遺伝子をもつマウス(AxDマウス)において、ミクログリアが脳保護作用を有する可能性を報告したがその作用は限定的であった。そこで本研究では,既存ミクログリアを除去し新しいミクログリアと置換することでその脳保護作用を増強させることを計画した。方法には,colony stimulating factor-1受容体拮抗薬PLX5622 (PLX)のON/OFFによる置換法を用いた。AxDマウスにPLXを1週間与えると、既存ミクログリアはほぼ完全に除去され、PLXを中止すると新しいミクログリアが自己増殖し約1週間後にはPLXを与えなかったAxDマウス群を上回る数まで回復した.このミクログリア置換により(置換14日後),RFマーカーであるFluoro Jade B陽性シグナルは有意に減少した.さらにAxDマウスのトランスクリプトーム解析で最も発現が亢進していた分子は炎症惹起物質Lipocalin2であったが、ミクログリア置換はLipocalin2発現を有意に減少させた.以上,PLXのON/OFFによるミクログリア置換により、AxDマウスの病態が改善されることが明らかとなった.これは,一次性アストロサイト病であるAxDに対し,ミクログリアへの介入が新たな治療戦略として有用である可能性を示唆するものである.

To: abstract pdf