正常な脳機能の発現には、適切な神経回路が形成されることが必要不可欠である。神経回路の担い手であるシナプスは発達初期に過剰に形成され、その後シナプス刈り込みによって適切な数へと調節されることが知られている。また、そのシナプス刈り込みは神経活動依存的に生じ(Schafer et al., 2012)、シナプスの寿命は神経活動の中でも特に同期活動の程度によって変化することが知られている(Wiegart et al., 2018)。さらに、成体での神経回路において、解剖学的に結合しているニューロン同士、すなわちシナプスが形成されているニューロン同士の同期発火確率は高いことが知られている(Takahashi et al., 2010)。しかし、同期発火したシナプスが選択的なシナプス刈り込みを逃れて結合を形成するのか、すなわち、同期活動と神経結合形成の必要十分性はいまだ検証されておらず、人工的な刺激によって同期発火を誘導した場合、同期発火ニューロン間に結合が形成されるかどうかは明らかではない。本研究は発達期のマウス皮質ニューロンに同期発火を誘導し、成長後に同期発火誘導細胞間に結合が形成されるか否かを検証することを目的とする。
 子宮内電気穿孔法によりマウスの体性感覚皮質2/3層にチャネルロドプシン2(ChR2)を発現させ、この個体に頭上から青色光照射を行うことで非侵襲的な同期発火誘導を試みた。その結果、光刺激後、最初期遺伝子であるc-Fosが発現した。すなわち、青色光が皮膚・頭蓋骨を透過し、体性感覚皮質のChR2を活性化することを発見した。また、この活性化が同期発火を誘導していることを、生体の局所場電位を記録することで明らかにした。本同期発火誘導手法を生後9-13日目のマウスに適用し、成長後in vitroパッチクランプ法により結合の有無を確認すると、同期発火を誘導したChR2陽性細胞間では他の神経細胞間と比較して有意に高い結合確率を示していた。この結果は、発達期のシナプス形成において同期発火した神経細胞が結合を形成しやすい、というHebb則に一致するものである。

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